ノウハウ マネジメント

言葉で指導しても、相手に実感がなければ行動変異は起きない

ノウハウ

世の中に、一人で全て完結するような仕事はなく、必ず誰かと一緒に活動するのが常です。その中でチームを任される立場にある人は、自らの仕事をこなすだけではなく、周りに指示や指導をしながら、そのチームに与えられたミッションを達成しないといけません。自分の仕事だけでも大変なのに、周りの面倒まで見なければならないとてもハードな立場です。

そこで必ず直面するのが、「部下が指示通りに動いてくれない」事象です。

何も全く言うことを聞いてくれないわけではありません。その場では分かりましたと返事をしてくれ、実際行動に移してくれます。しかし、その行動の細部において、または方向性において微妙な差異が生まれている場合があり、それを後に気付いて認識合わせをしなければならなくなる。また、成果物の修正を行い、消耗する。大小はあれど良くある話です。

その原因は、主にコミュニケーションにある観点がない為に起きている事が殆どです。この記事では、その原因を明確にすると伴に、どう伝えれば相手に言いたい事が正しく伝わり、正しい行動を変異を起こせるか解説していきます。

言葉だけでは相手は理解しない

では、何故私達の言葉は、相手に正しく届かないのでしょうか。表現が悪いのでしょうか。それとも説明が足りないのでしょうか。

そういう要素もあるでしょうが、殆どは違います。この事実を念頭においていないからです。

「言葉は、相手の中にある素材で成り立つものしか伝えられない」

例えば、私が経営に携わっている飲食店の現場ではこのような事がありました。オペレーションに対して、改善策を策定し、その理由・具体的な行動・事象に対するパターン分岐等を説明しました。しかし、その後の相手の行動は確かに改善の方向に向かいましたが、それは表面上のポイントを抑えているだけで本質的な細かい行動まで変わらなかったのです。それを受けて、再度説明し、分かったと回答を得てまた時が経つ。そうすると、また似たような地点に帰ってしまっているのです。

当初の私は自分の改善策に無理があるのか、伝えてる言葉が悪いのかなど、自分の行動の質に問題があるのではないかと考えていました。そんな自問自答を繰り返している日々の中で、突然転換点がやってきました。

ある日、その対面している相手が自分の行動の不備に自ら気付き、「これってこれまで散々指摘してくれていた事じゃないか。自分は何を今までやっていたんだ」と自分に言い聞かせるように、私に伝えてくれたのです。この時、私も同時に大きな気付きを得ました。

「言葉は情報でしかなく、それを受けた相手の中に実感がなければ、ただの音と同じだ」

つまり、私達がどんなに相手に懇切丁寧に説明を尽くしても、相手の中にそれとリンクする経験がなければ、言葉は右から左に通り過ぎていくだけなのです。

相手の実感を醸成しよう

それでは、私達が相手の行動変異を促すにはどんな働きかけを行うのが効果的なのか。私が考える重要な要素は、以下です。

①相手の実体験に根ざして説明する

②伝えたい内容に基づく相手の実体験を増やしてもらう

①相手の実体験に根ざして説明する

言葉を受け止める時、概念としてそのまま受け取っても余り意味はありません。正に猫に小判。その言葉の重要性を実感しない限りは、その情報を自らの内に吸収するには至らないのです。そして、重要なものとして捉える受け口は、己の中にある体験が受け皿となっています。なので、説明する際は、必ずこの受け口である相手の体験の存在を確認しながら話を進めるのが肝要です。相手の体験を会話の中で確認し、そこから展開する様に伝えたい内容を広げていけば、聞き入れ、行動に転換する可能性が高まります。

②伝えたい内容に基づく相手の実体験を増やしてもらう

ただ、伝えたい内容に紐づくような体験を常に相手が持っているかといえば、必ずしもそうではありません。特にマネージャーの立場で現場のメンバーに伝えるとなれば、その目線は作業するのに必要な高さだけではなく、俯瞰した管理側の目線のものになります。この目線の高さに基づく内容を現場の人に伝えるのは、至難の業になります。当然現場の人は、管理側の仕事をする機会が少なく、何を言われても実感に乏しいからです。これでは受け皿がない状態といえます。

そんな時は、全く同じ仕事を体験する必要はなく、擬似的に似たような仕事を経験して貰えば良いのです。

例えば、管理方法(人やもの)の重要性を伝えたいとすれば、必ずしも「人」の管理経験をする必要はありません。「物」の管理だけでも良いのです。ここで重要なのは、オペレーションそのものの方法まで当人に委託する事です。裁量を与えて、その方法が如何に結果に影響するかを実感して貰うのです。この自分がどう管理方法と結果が如何に繋がっているか目の前で起きれば、今自らが携わっている作業一つ一つの重要性に気付けるのです。

まとめ

日常生活においても、一生懸命話ても中々相手に伝わらない時はあるでしょう。これは、伝える技術の良し悪しも大きな要因ですが、その前に相手方に受け皿があるかが重要なポイントです。頭では理解していても、それを実感として受け止めて貰えなければ、必ず受け入れては貰えません。

巨人名誉監督の長嶋茂雄さんで有名なのが、

「ボールが来たら、良く引きつけてグッ・シュッ・バーンと振る」

と配下の選手に指導をしているシーンがありましたが、これは素人の私たちには全く訳の分からない内容ですが、プロとして幾多の練習と経験がある人に取っては有意味な言葉になっているのです。受け手に経験があり、それに基づいてポイントが抑えられていれば、この様なシンプルな言葉でも気付きを与えられるのです。逆に相手に経験がなければ、私たちが長嶋さんに上記の言葉を貰った時の様に「何を言っているんだろう。。」で終わってしまうのです。

ここで重要なのは、同じ言葉でも、受け手の経験で全く違う結果になる点です。相手に何かを伝えたいのであれば、まずは相手の経験を探り、そこに基づいてコミニケーションを進める。もし、相手にその経験がなければ、共に経験をするか、既存の似た経験から攻めるのが定石です。

皆さんの経験と、ここまでの内容がリンクして少しでも役に立つ情報になっていれば幸いです。それでは次の記事でお会いしましょう。

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