飲食店の経営に関わる中で、同じ商品を売っていても売上は下がる時もあれば、上がる時期もある。これは何が原因なのか都度考えさせられます。この記事では、これまでの経験の中で培ってきた売上が上下する原因の知見を共有したいと思います。
売上が安定しない等、販売や経営で困っていて、次の施策に頭を抱えている方の参考になれば幸いです。
お客が来るのには明確な理由がある
例えば、開店からある程度時間が経ち、一定の顧客がついた飲食店があるとします。店主としては、一安心していたところです。ところが少し経ったところで、突然売上が減りだします。商品もサービスも何も変えていないし、ある程度固定客もできたはずなのに何故だと頭を抱えます。その後、一段下がった売上で安定してしまう。
こういった話は良くあります。というか、大なり小なり上手く立ち回れていないと必ず似たような状況になると思われます。
では、何故売上は減少したのでしょうか。それは一言で言えば、来てくれていた顧客の一部で、「お店に来る理由」が無くなったからです。一度固定客になるにしても、そこには通う理由が存在します。その理由があるが為に通っていた。それが店主の気付かないところで提供出来なくなったので、足が遠のいたという論理です。
特に、飲食店の店主が陥ってしまいがちなのは、今の顧客はお店の商品が好きで通ってくれているのだという勘違いです。一部正しく、それが全てではないというのが真実です。お店に通ってくれる理由の解像度を上げて観察すると、それが複合的に折り重なってなりたっているのが分かると思います。商品が良いからという一面だけで評価されている場合は、逆に珍しいケースといえます。顧客本人ですら言語化が出来ていなくても、複数の要素によって「好き」が、そこに成り立っているのを理解しないといけません。
この例題に上げたお店でいうなら、明確に売上が下がる理由が見受けられます。それは「何も変えなかった」点にあります。当初この形である程度の結果が出たので、今の商品に問題がないと判断するのは間違いではありません。しかし、それは商品が良ければそれで良いと考える一部の人を留めるのに有効であって、その他の理由を心に携えている人をも引き止めるものではないのです。
人によっては、今の値段によって評価していた人もいるでしょう。ただ、この場合も、こちらの値段を変えずにいても、同じ値段で更に品質の高いものが市場に出てくれば、相対的にこちらの商品は高いものとして競争力を失います。また、同じ品質で値段が低いものが出ても同等の状況になります。今は特にインターネットで購入する人が増えているので、このような事態は日常茶飯事です。それ以外にも、自分のお店の近くに全く別ジャンルのお店が出来たとしても、これも来る理由を削ぐ要因になり得ます。その商圏にいた人の選択肢が増えれば、比較しようがないものでも選ばれる確率は下がるからです。
上記は、値段の市場環境が変わったという考察です。その以外にも考えられる理由はあります。固定客の中に新しいものを好んで消費する割合が多かったという仮説もあります。この層は、常に新しいものを探していて、一度気に入ったものが見つかると一定期間通ってくれます。しかし、同時に他に新しいものが市場に出れば、そこに簡単に鞍替えしますし、同時に同じものが提供されていれば直ぐに飽きて店から足が遠のいてしまうのです。
このように固定客の中でも、どの要素で足を運んでくれるかは千差万別なので、その評価ポイントがどこにあるのか分析し、そこに対して改善と提案を常にしていかなければいけません。市場の状態が変わらないで、顧客の消費心理も変わらない、そんなケースはありえません。世の中は変わっていくし、人の心は移ろいゆくものです。そこに手を打たなければ、必ず売上は低減していくのです。
増員によって客足が遠のいた話
具体的に、私が経験した売上減少のケースを共有したいと思います。
我々のケースの場合、結論からいえば「お店の雰囲気」を目的とした人達の理由を無くした為に、売上が下がりました。
当時、売上も安定してある程度経営的には余裕がある時期でした。それもあって増員を図って営業時間を増やし、稼働時間増によって売上を上げようと考えていました。これを実行した私達は、新たに人を採用しました。元々同じ仕事をしていてスキルも高い方でした。そして、その方が現場に立つ様になってどうなったか。結果は売上がどんどんと下がっていく状況に陥りました。
正直、何故落ちていくのか直ぐには分かりませんでした。営業時間も増え、増員によって提供スピードが上がって利便性は確実に向上した筈でした。現場に任せられる箇所も増えて生産側の余裕が生まれたので商品の品質も向上したと思っていました。それでも売上は右肩下がり。そこから何故だ何故だと、様々な要素を探ったところ、答えに辿り着きました。
それは、新しい方が入った事でお店の雰囲気が変わってしまったのが理由であったと私は振り返っています。それまでの現場メンバーは、家族を主体に長らく働いてくれているアルバイトで構成されていました。つまり、家族的な雰囲気がそこにはあったのです。本当の家族と、気心知れたアルバイトの現場で作られていた空気は、それは温和なものだったと思います。そこに新しい方が入って一気に空気感が変わってしまった。現場のヒアリングやSNSレビューでもそれが表れていました。
雰囲気を評価していた層が離れていったと、言葉にすると軽いですが、それで売上が実際に変わってくるのが怖いところです。我々のお店の固定客において、「雰囲気」という理由がそれだけ大きな要素だったと言う事です。
まとめ
お客がお店や商品を選ぶ時、必ずそこには理由が存在します。もし新しいサービスを提供するなら、如何にして来る理由を作るか、または既にサービス提供をしているのであれば、今の顧客が何を理由に来ているか具に分析して必ず明確にした方が良いです。良かれと思って行った施策が、実は自らの強みを打ち消して逆の効果を生み出し兼ねません。
そして、反対に売上を上げたいのであれば、「理由」を増やす様に商品やサービスを改善すれば良いのです。限られたリソースの中で出来る事は少ないと思ってしまいがちですが、記述の様に雰囲気が少し変わるだけで売上が変わるのです。来る理由、来ない理由がイコール売上なのです。
最後まで読んで頂き有難うございました。売上や経営、副業などに関する記事を書いていますので是非他の記事も読んでいって下さい。それでは他の記事でお会いしましょう。
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